2008年9月18日

日輪(アワ)きらめきて

「今までにない噴火が起こり、それが続いていることに民の不安が募っていることは分かります。ここで生贄を捧げることを許さずに噴火がさらに続けば、それは生贄を捧げないこと、つまりそれを許さぬもののせいだと思うでしょう。しかし、生贄をささげてもなお噴火の収まらぬ場合には、それは生贄が不足だからだとしてさらに生贄を捧げることになりかねません」
「ならばどうすればよいというのだ」
 ホアカリの声が大きくなってきた。
「火山の噴火というものは何時までも続くわけではありません。必ず収束するものです。プチの噴火もはや一週間を超えました。ここ数日で一応おさまるのではないかと思います。そこでですが、生贄を許さなければ民の動揺が大きいでしょうからここはやむを得ず許すとして、しかしできるだけ民の命は失いたくないのですから生贄を捧げる日取りを遅らせておくのが良いのではないでしょうか。そうすれば、生贄を捧げる前に噴火が収まり、無駄な生贄を捧げずに済む可能性もありましょう」
「なるほど、それは良い考えかも知れぬ。うむ、それが良い。ならばオオヤマツミ、生贄のことは差し許すとして、実際に生贄を捧げる日をできるだけ遅くせよ」
「分かりました。そのように致したく存じます」
 お辞儀をし、退出しかけたオオヤマツミにホアカリが声をかけた。
「生贄となる娘だが、生贄とする前に我が元に来させてくれ。生贄となることをワシからも良く頼んでおきたい」
「それはおやめください。生贄となるものも生への執着がございます。いたずらに哀れみの情を表せば、どのような振る舞いになるかもしれませぬから」
「そうか。では不憫だが何も声をかけぬことにいたそう」

 オオヤマツミが腰をかがめながら退席したと思ったら、今度はオオヤマツミの娘、佐久夜姫がまかり越したとの知らせが来た。
…親が帰ったと思ったら娘が来た。何と騒々しいことよ…と思ったがとにかく用向きを聞くことにした。
 佐久夜姫が部屋の入り口で膝まづいている。ホアカリが声をかけるのをじっと待っているのだ。
「サクヤ、何か急用か」
 佐久夜姫は思い詰めたような顔を上げた。
「大切なことを申し上げに来ました。実はホアカリ様の子を身ごもりました。薬師も間違いないと申しております。ホアカリ様の子となれば私に生むことなど叶いませぬゆえ、急ぎお知らせに参りました」
 ホアカリは怪訝な顔をしている。

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