そしてくじ引きが行われ、生贄を出す村が決まった。その三つの村の村長が生贄となる娘を従えてオオヤマツミの前に出た。村長の顔は名誉を得て晴れやかである。しかし、すぐ後ろに控える娘は体を小刻みに震わせている。生贄にならずに済んだ娘たちはほっとしたものの、生贄になる娘たちがその場にいることもありじっとうつむいている。
「決まったな。ならばその三人を生贄として明日プチの宮に送り、あさっての夜明けを待って山に上げることにする。時にその三人の娘たち、お前たちは何も悲しむことはない。多くの村を救うために山に登り、山の神の元にいくのだ。幸せを信ぜよ」
その時である。脇の戸口に人影が現れた。皆の視線が集まる。何とそこに立っているのはオオヤマツミの娘佐久夜だ。
「そのものたちは生贄にならずともよい」
佐久夜が凛とした声で言い放った。オオヤマツミは慌てて、
「何を言う、佐久夜。今ようやく生贄三名が決まったところだぞ」
と、言った。
「山の神はそのものたちを望んでは居らぬ」
「何を申すか」
村長たちはオオヤマツミとその娘のやり取りをあっけにとられて見つめている。
「先ほど神殿に行って山の神と話をしてきた。山の神は私を所望している。それゆえ私が生贄としてお山に参る」
「な、何と。佐久夜、何もお前が生贄にならずとも既に生贄は決まっているものを」
「心配されまするな。今、オオヤマツミとして生贄になる娘たちに何と仰せられた。何も悲しむことはない、神の元にいくのだと言い聞かせたばかりではないか」
「だが、何故」
「良いですか。此度の噴火は今までにない大きな激しいもの。普通の生贄ではおさまりますまい」
「そうだ、だからこそ生贄を三人にしたのだ」
「このような大噴火のときの生贄には村長の娘たちでは不足、このプチを祀るオオヤマツミの娘こそ生贄にふさわしいとお思いになりませぬか」
村長たちはなるほどと思い始めて静かに佐久夜の言うことに耳を傾けている。一人狼狽しているオオヤマツミに向かって決定的なことを佐久夜が言い放った。
「それに生贄は私一人のようで実は一人ではありません。この腹の中に子がおりまする」
「何、子が腹に。一体誰の子。おお、まさか…」
「そのまさかじゃ。この腹の子はホアカリ様の子じゃ。それでも生贄として不足があると申すか」
「さればなおさら、ホアカリ様の子を生贄になどささげるわけには行かぬ」
「それがの、ホアカリ様の子であるが、ホアカリ様はお認め下さらぬ。他の男の子かも知れぬと申されるのだ。アテルヒの神の子として認められない理由も分かったが、しかしこの佐久夜、他の男との子をホアカリ様の子と偽ったと思われてはいかにも悔しい。この子と共に生贄となり、見事、山が静まれば佐久夜の言うことがまことだったと分かるであろう。そのために生贄となるのじゃ」
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