寒いので皆暖かいものを飲もうと早めに集まってきた。熱い紅茶をすすりながら朝食の準備にかかった。
「食料は何が残っているんだ」
とアンドリューに聞くと、
「卵とベーコンがあるよ」
とのこと。
早速バーベキューセットに火をつけ、ベーコンを焼き、目玉焼きをつくり、トマトを焼く傍らパンをあぶってトーストにした。かくて昨日のパンだけの朝食とは打って変わって豪華な朝食が実現した。
さて向かったのはCircular Pool Lookout。駐車場から歩いてすぐの所だ。80メートルほどもあろうか、真下に文字通り円形のプールが見える。垂直の赤色の壁に囲まれた感じだ。もちろん一方、つまり下流側は谷になっているがそこには大きな岩がごろごろ転がっている。一旦駐車場に戻り反対方向に歩いてゴージへの道を下る。2-300段ほどの岩の階段を降ると谷底だ。飛び石伝いに流れをわたること数回、ついにさっき上から見たCircular Poolに到達した。水はどこまでも透明だ。それだけに冷たく見える。昨日のカラミナの水より冷たいに違いない。
水辺に行って手を差し入れたフレッドが振り返り、顔を横に振る。「冷たい!」とジェスチャーで示しているのだ。
私も水に手を入れてみた。確かに冷たい。昨日泳いだ水よりも数度低いと思われる。入るか、やめるか、迷った。数秒の後折角ここまできたんだから入ろうと心を決めた。
ブーツを脱ぎ水着一つになってそっと水に足を入れる。そして一気に腰まで入ると冷たさというより痛さが下半身を包んでくる。シーッ、自然に口がすぼみ、そこから搾り出すような息が出ていく。
人は息を吐く時には力が出、吸う時には力が出ない。だから武芸者は呼吸に非常に神経を使う。若い頃柔道をやっていたが、技をかけるときは声を出せと指導されたものだ。気合を入れると力が飛躍的に増すのは事実だ。
もっと象徴的な話をすれば、人は「産声」といわれるように吐く息とともに誕生し、「息を引き取る」というように息を吸って命を終える。
だから冷水に入ったときに自然に出る「シーッ」は体の緊張を高める反応なのだろう。
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