「ここを見てください。オークで書いた黄色い線が並んでいます。数え切れないくらいかかれています。捕ったカンガルーの数を記録したとか、日数や年数の記録だとか色々な説がありますがまだはっきりしていません。その先を見てください。宇宙人のようなのが並んで描いてあるでしょう。これも意味は分かっていません」
黄色い線のほうはある一枚の頁岩層に延々とかかれている。その数はどれだけあるか分からない。何万という数かもしれない。宇宙人のほうは、全体はこけしのような形で、丸い顔に、これまた丸い目がついている。それにしてもアボリジニーのロックペインティングには宇宙人のようなものが頻繁に登場する。想像で描いたのではなく実際に宇宙人と遭遇していた結果とも考えられる。
足元にはカンガルーのものらしい白骨が散乱している。ブッシュコックローチと呼ばれる直系3センチほどのまん丸の虫の死骸もあった。
上流に向かって歩き川に張り出した大きな木の所で休憩した。アンドルーはバックパックの中から一口サイズのケーキを取り出して皆に勧める。朝早くから動き始め、食事の支度をし、車を運転し、プールには率先して飛び込み、各所の説明をし、そしておやつも配る。ガイドとは結構大変な仕事だが、そのほんの小さな心配りがツアーの印象を決めるのも事実である。
「その木を伝って川の真中まで行くと素晴らしい写真が撮れるよ」
アンドリューが指した木はなるほど川に向かって大きく張り出している。それだけではなく、幹の上半部は皮が剥けているし、色も茶色になっている。多くの人が写真をとりに行ったり来たりした事が明瞭だった。もちろん我々も順番に写真を撮りに行った。人が動くたびに木が揺れるので情けないへっぴり腰になってしまったが。
前方が開けたと思ったらそこがFortescue Fallsだった。今までのどちらかというと暗い滝ではなく太陽の光に輝いている。水の色も青く全体が明るいのだ。階段状の滝を下り落ちる水の白さが岩の赤茶色と周りの木々の緑に強いアクセントを与えている。
階段状の岩壁を登って滝の上に出る。ここからの景観も素晴らしい。絶壁に近い側面の岩壁のテラス状のところには何人もの人達が座って、景色と吹きぬけるさわやかな風を楽しんでいる。
我々はさらに上流を目指した。足元には真っ黒い肌をした鉄鉱石の塊がごろごろと転がっている。目を転ずれば近くの木の枝の黒い蝙蝠が三羽ぶら下がっている。
「オー、バットマン」
と思わず言ったら、
「ロビンがいないぞ」
とアンドリューが応じた。この辺の掛け合いの妙が楽しい。
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